FIFAで度々問題視される権利問題。今回はイブラヒモビッチが問題提起した一連の騒動と共に、掘り下げていく。
11月24日、ズラタン・イブラヒモビッチがあるツイートを投稿した。
Who gave FIFA EA Sport permission to use my name and face? FIFPro? I’m not aware to be a member of FIFPro and if I am I was put there without any real knowledge through some weird manouver. And for sure I never allowed FIFAor FIFPro to make money using me
「誰がEAに俺の名前を使う許可を出したんだ。FIFPro?会員になった覚えは無いし、会員だとしたら、正しい知識がないまま、いくつかの奇妙な操作によってそこに入れられている。確かなのは、FIFAやFIFProに俺を使って金を稼ぐことを許可したことは無い」
その後、トッテナム所属のガレス・ベイルも同調する形で、#TimeToInvestigate (調査する時がきた)というハッシュタグを添えて投稿した。確認できる範囲では発端人のイブラヒモビッチ以外で、今回の騒動に言及したのはベイルだけだが、選手側では以前から不満の声が上がっていたのかもしれない。要するに勝手に俺の肖像権を使うなという主張を投稿したわけですが、一文に出てきた「FIFPro」について説明していきたい。
FIFProとは?

上記でも何回も出てきた”FIFPro(国際プロサッカー選手会)”は1965年に設立されたプロサッカーの選手会である。FIFPROアジア支部代表の山崎卓也氏は「全世界の60以上の選手会をメンバーに抱えて、FIFAからも国際的な選手の権利を代理する唯一の団体として認証されています」と語っている。
クラブの名前やエンブレムが偽名になっても選手は実名搭載されているのはFIFProの権利を行使しているためであり、プロサッカー選手の殆どが会員になっている。選手側は複雑な契約関係は代理人に任せていることから、FIFPro会員になったことを知らない選手も多くいるだろう。
EA側の主張

一連の騒動を受けてEA社は米フォーブス誌の独占取材に応じた。記事の中では「これは私たちの戦いではない。EA Sportsやゲームソフト、選手やファンの戦いでもない。代理人とFIFPro間での争いです」とした。FIFPro側からも現在この問題に対処していると報告を受けたという。
また、EAは選手の肖像権に関して、基本的にはリーグや各クラブとの契約を通して取得しており、そこに含まれない一部の代表チームの選手などはFIFProの権利を使用しているとのこと。つまり、カバー選手などは個別に契約し、その他の選手はリーグのライセンスにクラブや選手のライセンスが含まれているという。
代理人側の主張
一方でイブラヒモビッチを含む多くの選手を顧客に持つ敏腕代理人ミノ・ライオラ氏の主張は異なる。
「FIFProとAC Milanは選手個人の権利は持っていない」
EA側の主張と真っ向から異なる。さらに、彼はEAが10年間この問題に対して向き合ってこなかったとし、返答するか法廷で話し合うか選べと、法的措置を取る姿勢も匂わせている。代理人側からすると選手に支払われるべき金額を求めることは当然と言えるが、海外サッカーファンなら発端人がライオラというので腑に落ちるでしょう。
複雑な契約事情
これらから、状況はかなり複雑化しており、我々は契約内容を知る由もないので、実際のところ、どちらが正しいのかは依然分からないのが現状である。
FIFAの様な世界各国のリーグを搭載しているゲームでは、選手一人一人に肖像権の使用許可を得る事は、実質的に不可能である。ICON選手やカバー選手など商品のプロモーションに出演する選手は個別で契約していると考えられるが、それ以外はリーグやクラブを通して権利を取得していると考えられる。FIFAとしても選手の実名搭載だけは死守したいでしょう。
今後の展開
両者の主張が食い違っており、最悪の場合法廷に持ち込まれる可能性もある。ライオラ氏が抱える顧客が偽名になるのは避けて欲しいが、敏腕代理人でもあるので、揺さぶりを掛けているだけかもしれない。サッカーゲームにおいて実名選手の搭載は商品の大きな宣伝になり、実際にFIFAはリーグ・クラブ・選手のライセンス搭載を売りにしているゲームである。選手側からするとゲームの売り上げに大きく貢献しているにもかかわらず、適当な金額が支払われていないのは納得できないだろう。ゲーム内選手のタトゥーなど権利関係が複雑なサッカーゲームだが、是非とも両者納得できる形で落ち着いてほしい。
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